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中国マフィアと関わるとこういう目に遭う
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2022/08/26 (Fri) 12:48:43
中国マフィアと関わるとこういう目に遭う
大物逮捕で明るみに、「一帯一路」の裏でうごめくチャイニーズマフィア
秋の党大会前に「一帯一路は失敗」が決定か
2022.8.25
福島 香織
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71523
先日、タイで、カンボジア国籍華人(カンボジア国籍を取得している中国系住民)が越境違法賭博容疑で逮捕された。
よくある越境賭博事件かと思いきや、この容疑者が、東南アジアの知る人ぞ知る大物華僑で、中国の国家プロジェクト「一帯一路」に巨額の投資もしていた「佘倫凱」という名で知られる人物だった。
バンコクポストによれば、国際刑事警察機構(ICPO)の国際指名手配に基づいて、タイ警察が違法越境賭博犯罪の容疑で8月13日までにカンボジア国籍の佘智江を捕まえた。カンボジア国籍だが、中国に送還されることが決まっている。その佘智江こそが佘倫凱で、ミャンマーを拠点に、オンライン詐欺、人身売買、臓器売買など闇のビジネスを東南アジア一帯で展開していた、という。
佘倫凱こと佘智江(出所:百度百科)
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フィリピンで中国人を相手に荒稼ぎ
佘智江は、湖南省の農村に1982年に生まれ、96年から広西チワン族自治区の桂林で自動車の修理やシャンプーセールス、ガードマン、マッサージ店経営など、およそ20の職業を転々としていた。99年に、テンセントのSNS「QQ」のチャットルームでインターネットに触れ、インターネットビジネスに乗り出すことを決意する。
そこで小さな小屋を借り、ゲーム会社を設立、オンラインゲームを開発する。その後、とある福建のボス(おそらくはマフィアであろう)と東南アジアに行き、ゲーム開発で大金を稼いだ。さらにフィリピンにまで南下する。このときのゲーム開発とは、おそらく賭博ゲーム類だとみられる。
フィリピンで2年の間に大金を稼ぎ、その後何年もこの方面で蓄財した。この時のゲームのユーザーはほとんど中国大陸に住む中国人だった。
起訴状によると、2012年10月から2013年10月までの間、彼は新亜、万達、帝苑、唐会などの宝くじプラットフォーム(いわゆるオンライン宝くじ、実質は詐欺)を開設し、累計21.82億元を稼いだ。
この事業を手伝った湖南、広西出身者8人が2013年12月に逮捕されている。だが、この8人は実のところ被害者だった。彼らはフィリピンに連れていかれた後、パスポートを取り上げられ、1年弱の間、飛行機代の支払いなどを返済するとの名目で強制的に犯罪に加担させられていた。行動の自由も制限されていたのだった。
「一帯一路」の裏で詐欺ビジネスを拡大
彼は中国では「佘倫凱」の名前で成功した東南アジア大華僑として有名人だった。2011年、わずか4万元の資金をもってフィリピンに渡り、裸一貫、事業を成功させた立志伝中の人物と著名華僑雑誌でも紹介されていた。
公式のプロフィールによれば、2016年に香港で亜太国際ホールディングスという投資会社を設立し、その後、タイ・バンコクに本部を移転。中国本土、フィリピン、カンボジア、ベトナム、タイ、マレーシア、香港、ミャンマーなどの事業に投資していった。こうして亜太国際ホールディングスは総資産200億ドル、従業員6000人を誇るグローバル企業になった、という。
2017年2月、亜太国際ホールディングスはタイの国境貿易都市メーソートと川を1本隔てたところにあるミャンマー・カイン州(旧カレン州)のシュエコッコという村の18平方キロメートル弱の土地に、およそ150億ドルを投資する大型都市建設プロジェクトをスタート。これがミャンマー亜太国際スマート産業新城、通称「亜太新城」と呼ばれるプロジェクトだった。だが、実際は、中国人向けのカジノ娯楽リゾート建設プロジェクトだった。
2019年までに、この亜太新城には中国、香港、台湾、フィリピン、ベトナム、タイ、カンボジア、シンガポール、ミャンマーの300企業が入居し、「一帯一路」の中国・タイ・ミャンマー経済回廊モデルプロジェクトの1つとされた。少なくとも中国の主だったメディアでは、そのように報じられていた。
だが彼はその裏で、怪しげな詐欺ビジネスを拡大させていた。
2013年に中国国内で佘智江の名前で行ったオンライン越境賭博事件が発覚した後、フィリピン政府は一連のオンライン賭博・詐欺企業の取り締まりを強化。すると、佘智江はカンボジアに逃げ出した。この時、カンボジアではオンライン宝くじ企業に対して大規模な取り締まりはまだ行われていなかった。
そこで彼はカンボジアパスポートを取得し、カンボジア国籍華人の身分となった。
そのころのカンボジアは、ちょうど一帯一路に調印したばかりで、急速に中国からの移民が増えていた。また中国人観光客をターゲットにした観光開発が中国企業や華僑らによって展開しつつあった。
この結果、カンボジア南部の港湾都市、シアヌークビル全体が、中国人向けカジノを中心としたチャイナタウンに発展した。だが、このシアヌークビルでも、近年、中国人が中国人を騙す詐欺グループ拠点の告発が相次いでいた。ネットの高額給与の広告につられてカンボジアに出稼ぎに来た中国人、あるいは東南アジアの中国系国民からパスポートを取り上げて監禁し、監獄以下の劣悪な環境でオンライン詐欺、あるいは電話詐欺に従事させたりしていた、という。
被害は東南アジア国籍者にも広がっていたので、周囲の国の圧力にカンボジア政府も2019年に中国と司法協力協議に調印し、カンボジアにおける中国人犯罪の摘発に動き始めた。その結果、2022年初めごろから、中国人グループによる中国人の集団拉致、禁固、強制労働事件が次々と発覚し、犯罪容疑者として中国人カジノ経営者が逮捕されていた。
シアヌークビルの犯罪拠点と佘智江との関係は今のところ不明だが、一帯一路プロジェクトが、チャイニーズマフィアネットワークの犯罪ビジネスに利用されているところは共通している。太平島嶼国でも、同様にチャイニーズマフィアネットワークと一帯一路が結びつく形で、オンライン詐欺や暗号通貨を使ったマネーロンダリング、麻薬犯罪などの拠点になりつつあるという懸念が広がっている。
中国人を監禁する「KK園区」
佘智江に話を戻すと、2017年9月16日、ミャンマーのカイン州で開かれた第14回世界華僑ビジネス大会で、佘智江は現地のボンソチド将軍と呼ばれる人物と「亜太新城」プロジェクトの投資協議に調印していた。この将軍は、この地方を直接管理していた。カイン州はミャンマー東部の1つの州であるが、カレン族とミャンマー軍が長期にわたってゲリラ戦を継続しており、事実上、法律も警察も機能しておらず、銃を持っている者が支配者であったという。
この地方で、佘智江は亜太新城と並行して「KK園区」という施設を作った。高い塀に囲まれ、武装の歩哨が100メートルごとに立つKK園区は、だまして連れてきた中国人を監禁する施設だった。そこに監禁されている中国人たちを佘智江は「子豚」と呼んで人間扱いしなかった。佘智江は将軍の友人であり客人なので、彼に意見するものはなく、反抗する者、仕事をきちんとしない者、逃げようとする子豚たちに対して、手加減なしの虐待をした。
このKK園区内に1000人以上の中国人が狭く劣悪な部屋で一列に並んで座らされ、ただひたすら電話やパソコンの前で、電話詐欺やオンライン詐欺をさせられた。天文学的数字のノルマが課され、ノルマを達成されないとこん棒で殴られたり、レンガを運ばされたり、虐待された。さらに重い罰として、狭い部屋に監禁され、1日2時間しか眠らせない睡眠剥奪の拷問が行われた。また「子豚」そのものが商品として売買もされていた。逃げようとすると銃殺されたという。
ある台湾商人によれば、彼はかつて17万ドルの身代金を払ってKK園からある人物を取り戻そうとした。しかし、苦労して交渉したのち、2時間待って相手側から断られた。ドバイの買い手が、この台湾商人の支払い額の5倍の額を出して同じ人物の臓器を買ったのだという。すでにその人は医療船に乗せられてしまっており、海上で臓器を摘出され、残りの遺体は海に捨てられると説明されたという。
8月、KK園区の管理者が、中国、カンボジア、ベトナム、ミャンマー、ラオスなどの政府が国際的な捜査チームを立ち上げ、KK園区の詐欺および人身売買犯罪を一掃し、世界各地から集められていた被害者を救出する作戦を準備中だという噂をキャッチした。この噂を聞いて佘智江がタイに脱出したところ、タイ警察に逮捕されたという。実は、反政府ゲリラの拠点であるカイン州は政府権力が及びにくい場所で、警察も動けなかった。彼を自らタイに脱出させる作戦であったようだ。
明るみになった一帯一路の闇
こうして佘智江の悪行は暴かれたのだが、彼の最大の罪(あるいは功績)は、一帯一路の闇を広く知らしめたことだろう。
一応、中国は亜太新城と一帯一路は全く関係ないとしている。ミャンマーの中国大使館は次のような声明を発した。
「亜太新城プロジェクトは第三国の投資であり、一帯一路となんら関係ない。中国・ミャンマー政府ともにこの点について明確なコンセンサスがある」
「中国は、越境賭博問題に対して一貫して明確な立場をとっており、中国資本が現地の賭博場に投資することは許さないし、中国人が現地の賭博場経営に参与することも許さない。また中国人をこうした賭博場に誘致することも許さない。中国はミャンマー側と執法安全協力を強化し、違法賭博の取り締まりに力を入れ、電信詐欺など越境犯罪活動を取り締まり、両国の社会治安、人民の生命、財産の安全を守っていく」
だが、佘智江が本当に一帯一路と無関係であったかは、はなはだ疑問である。
まず佘智江は2020年7月まで、中国共産党華僑聯合の常務副会長だった。
2019年7月、亜太新城プロジェクトに関して、中国国際経済交流センター(CCIEE)と、佘智江の企業、亜太国際ホールディングスの調印式が北京で行われ、多くの中国メディアに報じられている。CCIEEは発展改革委員会が主管する経済研究機構で、中国共産党のハイレベルのシンクタンクだ。
佘智江は、このとき、亜太新城プロジェクトが一帯一路の実践であるだけでなく、民営企業が国家の一帯一路樹立を支援する1つのモデルとして重要な意義がある、とコメントしている。誰が見ても、CCIEEがコンサルを引き受けて進められている正式な一帯一路プロジェクトであった。
さらに、2018年11月に習近平がフィリピンを公式訪問したとき、フィリピン大統領ドゥテルテ主催の晩餐に佘智江も招待され、習近平とも会って親しそうにしている様子も報じられている。
米国平和研究所(USIP)は、ミャンマー賭博都市の問題について、中国と越境ネット犯罪の関与についてのリポートをまとめ、中国共産党がミャンマーの浸透工作にこうした怪しげな華僑マフィアを使う手法を指摘していた。
報告書によれば、元マカオの著名な武闘派マフィアで、今は中国共産党の党員で政治協商委員になっている尹国駒、通称「歯かけの駒」が経営する香港東美集団も、2020年にミャンマーのミャオワディに180億ドルを投資してシアヌークビル・カジノ建設プロジェクトを進めている。トランプ政権は2019年に彼をグローバル・マグニツキー法(人権侵害への制裁)に基づく制裁リストに含めていた。
こうしたことから想像されるのは、中国の一帯一路プロジェクトは、チャイニーズマフィアによるさまざまな犯罪に利用されている可能性があり、それを利用して中国共産党が東南アジアの政治経済に浸透しようとしていた可能性もある、ということだ。
一帯一路は、世界の途上国を債務の罠にはめるという点ですでにイメージは真っ黒だったが、さらに、こうした華人・華僑による闇ビジネスが絡む怪しげなものであることが明るみになった。
秋の党大会前のこのタイミングで、国際的にも有名な大華僑投資家が逮捕されたのは、やはり党内で「一帯一路」の失敗が決定づけられたということではないだろうか。そして「一帯一路」の失敗が決定づけられたということは、それだけ党内における習近平の立場は厳しくなっているということではないかと想像されるのである。習近平の総書記連任がすでに決定的であるとするのは、まだ時期尚早ではないかと思うわけだ。p
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